
“中華圏のアカデミー賞”と称される第60回台北金馬獎(2023年11月開催)で日本資本映画と初の《最優秀作品賞》を受賞、《最優秀編集賞》との2冠に輝いた映画『石門(せきもん)』(2022)が、ラビットハウスの配給で2月28日(金)より全国順次公開となった。
そして2月28日に待望の初日を迎えた『石門』の公開記念舞台挨拶が、3月1日(土)、シネスイッチ銀座で開催され、ホアン・ジー監督&大塚竜治監督が揃って登場、熱心に見守る観客に心の込もったメッセージを贈った。
春の到来を感じさせる晴天に恵まれた3月1日、シネスイッチ銀座には『石門』の初回上映に数多くの観客が詰めかけた。熱心な視線が送られる中、新作準備の合間をぬって来日したホアン・ジー監督、大塚竜治監督が揃ってステージに登場、温かい拍手で迎えられた。
冒頭の挨拶でホアン・ジー監督は、「こんにちは、皆さん(日本語で)。大塚さんと結婚して十数年は経っていますが、一緒に作った映画を日本で上映するのは初めてです。すごく感動して胸がいっぱいです」と満面の微笑み、大塚竜治監督も「この日、この作品を選んでくださってありがとうございます」と挨拶した。


続いて、愛娘である千尋さんが5歳の頃に『ママはどうして私を生んだの?』と尋ねられたことがきっかけで『石門』のテーマが決まったのですよね、と問いかけられると、ホアン・ジー監督は「実は私もいつも自分に問いかけています。なぜ私が生まれたのか、そしてなぜ娘を生んだのか。これは単純な言葉でこたえられる質問ではないと思いました。この質問に答えるためにこの作品を作りました」と語った。また、劇中に登場する両親はホアン・ジー監督の実際の両親であることについて、ホアン・ジー監督は「母もここに来て一緒に登壇したがっていました。撮影時、母は本当に突然髪を坊主にしましたし、父は足を怪我していました」と実際に起きたハプニングを物語に取り込んだエピソードを披露、会場からは驚きの声があがった。さらにコロナ禍で父親がマスクを買いに行く場面で大塚監督は「実際、あの時お父さんがマスクを買いに行くというので、何かあった場合に撮影できるよう、役者と一緒についていきました」と、少人数チームならではの機動力を活かした撮影のエピソードを披露した。
そしてビッグサプライズが発表された。現在準備中の最新作『A Woman Builds』が4月から撮影予定、3月中旬に香港の企画マーケットに参加することが決定したとアナウンスされた。次回作についてホアン・ジー監督は「4作目は1人の女性が母親・娘・妻という役割から自分を解放して、完全なる自分の空間を作りたいと願う物語です」とした。ホアン・ジー&大塚竜治、両監督のコラボレーションで結実した『卵と石』、『フーリッシュ・バード』の初日が4月4日(金)に決定、アップリンク吉祥寺で公開される。
鑑賞後の舞台挨拶となり“ネタばれ”トークも飛び出す中、観客へのメッセージを求められた大塚竜治監督は、「明後日が雛祭りというこのタイミングで上映が始まりました。将来、娘さんや周りにいる女の子が成長したときに、雛祭り前にこういう映画を観た、とお話してくれたら劇中のリンの人生も報われるのではと思います」と語り、ホアン・ジー監督も「性や出産に関する問題は母親や友達に相談しにくいという現実があります。ただ、それはとても大切なことだと思うのでこの3作品をきっかけに皆様が家族友人と言いにくい話題でも相談できるようになったら嬉しいです」と結んだ。
私たちが歩む道の先には、石のように重い扉が立ちはだかる。
第60回金馬獎《最優秀作品賞》《最優秀編集賞》2冠受賞作品 『石門』は絶賛上映中!
また、『卵と石』『フーリッシュ・バード』は、4月4日(金)よりアップリンク吉祥寺で公開。

【監督紹介】
ホアン・ジー
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1984年、中国湖南省生まれ。北京電影学院(2003-2007)の文学科で脚本を学ぶ。大学時代、生まれ故郷である湖南省で撮影したドキュメンタリー『Underground』で監督デビュー。2010年に、短編『The Warmth of Orange Peel』の 脚本・監督を務め、ベルリン国際映画祭に出品する。 2012年、初長編『卵と石』でロッテルダム国際映画祭でグランプリにあたるタイガー・アワードを受賞し、2013年、アンドレイ・タルコフスキー国際映画祭グランプリを受賞した。
2017年、大塚竜治と共同監督した長編第 2 作『フーリッシュ・バード』が、ベルリン国際映画祭でジェネレーション14+部門で、国際審査員のスペシャルメンション(準グランプリ)を獲得した。2022年の最新長編第3作『石門』はベネチア国際映画祭ベニス・デイズ部門でワールドプレミアを行った。 近年では、 若手の映像作家を育成のためにワークショップの開設や、脚本指導などを行なっており、2023年の山形ドキュメンタリー道場5にメンターとして参加した。
大塚竜治
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1972年、東京生まれ。日本のテレビ番組でドキュメンタリー制作に従事した後、2005年に中国に移住。社会問題をテーマにしたインディペンデント映画を制作する。ホアン・ジー監督の全作品、リウ・ジエ監督『再生の朝に-ある裁判官の選択-』(2009)、イン・リャン監督『自由行(A Family Tour)』(2018)、ガオ・ミン監督『回南天(Damp Season)』などの撮影監督も務めた。 2013年、ホアン・ジーと共同監督したドキュメンタリー作品『Trace』が香港国際映画祭でプレミア上映された。翌年には、初の単独監督作品『Beijing Ants』(2014)が Hot Docsで発表される。
2015年、ベルリン国際映画祭(Berlinale Talents)に参加し、2017年の『フーリッシュ・バード』と2022年の『石門』を共同監督とプロデュースした。アジア各国からスタッフを集め、国境を超えた映画づくりを目指している。 2023年の山形ドキュメンタリー道場5にメンターとして参加した。
『石門』あらすじ
2019年、中国湖南省の長沙市。単発の仕事で日々お金を稼ぎながら、フライトアテンダントになるための勉強をしている20歳のリン。郊外で診療所を営んでいる両親は、死産の責任を求めて賠償金を迫られていた。ある日リンは、自分が妊娠一ヶ月であることを知る。子供を持つことも中絶することも望まなかったリンは、両親を助けるため賠償金の代わりにこの子供を提供することを思いつくのだが…。
『石門』<作品情報>
監督:ホアン・ジー 大塚竜治
出演:ヤオ・ホングイ リウ・ロン シャオ・ズーロン ホアン・シャオション リウ・ガン
2022/日本/中国語/2時間28分/DCP/原題:石門/英題: Stonewalling/配給:ラビットハウス ©YGP-FILM 公式HP: https://stonewalling.jp/ 公式X: https://x.com/usaginoie_film
2025/03/04 13:55 配信
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